中国「堀墓」風習と、死後世界に関する思想【ご質問回答3】

中国「堀墓」風習と、死後世界に関する思想【ご質問回答3】

前回に引き続き、若い方々からいただいたご質問に回答していきます。

今回は中国人が「悪人の墓を掘る」風習と、死後世界に関する思想について。長い話となりましたので単記事としました。

前回のご質問回答記事:

中国ってなんであんなに残虐なの? 皆の疑問【ご質問回答2】

〔アイキャッチ画像:兵馬俑 byacworksさん

 

質問:中国には悪人や暗愚の墓を壊したり掘り起こしたりするのはどんな思想思考の元に行われる行為なのか

回答:「堀墓」は確かに古代から行われてきた風習だったようです。

堀墓、典型事例

掘墓の事例がこちら。人々に憎悪されて墓を掘られ、遺体を砕かれたという典型事例です。

曹操、葬礼が華美ではないだけで名君扱いの謎と、孔明「七縦七擒」

 

曹操は生きていた当時に大陸全土の人々から大変嫌われ、憎悪されていました。なぜなら現実に、民衆虐殺や粛清などの残虐な行いをたくさんしたからです。

ですから曹操の墓が破壊されたのは、おそらく三国時代が過ぎてから近い時代(100年以内)、晋の権威が各地に及ばなくなった頃ではないかと推測されます。
その当時だと曹操の残虐な行いがまだ生々しく民間の記憶に残っていたでしょう。おそらく直接の被害者の孫~曾孫くらいが生きていて、一族の復讐として墓を破壊し遺体をバラバラに砕いたのだと思います。
宝物の盗掘は墓が破壊された後に入った盗賊でしょうか。いずれにしても、遺体損壊という行為は相当の憎悪がなければやりませんので、単に宝物が欲しかっただけの人々による行いではなかったと思います。ただの盗賊なら遺体を壊しても何の得もありませんから、遺体など無視するでしょう。

今、曹操を崇拝する中国共産党や左翼たちが「フィクション・演義で作られた悪人イメージのせいで我が曹操様の墓は壊されたのだ。不当な誹謗中傷で被害に遭われた曹操様、お可哀そうに!」と叫んでいますが、もちろん嘘。

中華民間人※の意識において、憎悪や人気の背景にあるのは「フィクション以上の現実」です。

 

※洗脳を受けていない、純粋な民間人の意識のことです。政府工作員やシンパが誘導した反日憎悪などとは区別する必要があります

 

堀墓や遺体損壊は何の思想に基づく風習か?

罪人や敵の遺体を侮辱することは世界各地で行われていますので、これはもう人間がサルだった頃からの動物的本能に基づく……と言えるのではないでしょうか。残念ながら。

ただしその、あまり褒められたものではない本能的衝動を抑えない文化風習、または背中を押してしまう(促進してしまう)思想背景というものは確かにあると思います。

中国の場合それが「先祖を大切にする」儒教思想と、「魂と肉体は別々」と考える道教思想ではないかと考えられます。

 

古代中国人は先祖を大切にする気持ちがとても強く、墓そのものが信仰の対象でした。我々日本人が神社に参るのと同じか、それ以上の強い崇拝心で自分の先祖の墓に参拝します。先祖は神様と同じなのです。(もっとも、日本人も昭和の半ば頃までは先祖の墓参りをとても重視していましたが)

そのように先祖崇拝の心が強いので、逆に考えれば敵の神様(墓)を破壊することで相手方一族に精神的な打撃を負わせることができるわけです。先祖という源流を破壊することで今生きている人たちも否定したことになる、日本で言うところの「お家断絶」を表現する意図もあります。

 

さらに、道教では魂と肉体を別と考えます。魂が抜けた後の肉体を「魄(ぱく)」といいます。

死ぬと人間の魂は天に昇り、魄は地下で暮らす。これが中国の死後の概念。

魄が死後世界で生活するために大きめの墓を整えるのですね。貴族や王様になると巨大な陵墓になります。家具や家来を模した人形なども墓に入れて、地上と変わらない生活が送れるようにする。日本の古墳もこれに倣った習わしです。

よく日本でも「草場の陰(くさば-の-かげ)から見守る」という表現をしますが、これも中国の思想から来た言葉です。草場とは死者が暮らす地下を表現しています。

そうして死後も地下で先祖が暮らし続けている。じゃあ「天に昇った魂」って何なんだ!?と疑問になりますが、その話はまた別の機会に。

 

とにかく中国で肉体は魂と別なのですから、魂が去った後も地下から這い出して動くことができるわけです。この地上に這い出して動き回る状態を「キョンシー(殭屍)」と呼びます。いわゆるゾンビなのですが、中国版ゾンビは地下で普通に生活していたことになっているので腐乱はしていません。

キョンシーを描いた有名な映画『幽幻道士』、参考までにご紹介。日本でも大流行したので親御さん世代に言えば懐かしがると思います。三十年前に子供だった人たちは皆、額に紙を貼って直立不動で飛んだ(笑)経験を持つはず。
『幽幻道士』はホラーと言うよりファンタジーで、笑いもあって面白い。機会があったらご覧になっては。主人公のテンテンちゃんが可愛いですよ。またそれだけではなく、道教がどのような形で民間に浸透してきたかも具体的にイメージできると思います。

なおこれは香港映画です。三十年前はまだ、香港の人たちにも「自分たちは華人だ」という意識があったのですね。中華文化への郷愁が強く感じられます。この種の道教思想によるファンタジー香港映画では、他に『チャイニーズ・ゴースト・ストーリー』がお奨め。(映像技術は古くて笑えるでしょうが)

さて。

以上の話でお分かりの通り、中国では死んでも肉体は滅ぶことなく地下に存在し続けることになっています。

死んだあとも肉体が歩き回ると想像すれば恐ろしいから、敵なら墓を掘り起こして遺体を壊しておかねばならないと考えるようになるでしょう。

特に曹操など民衆虐殺した恐怖の大魔王は、もし這い出てきたらまた同じ虐殺が起きると想像されます。
だからこそ、地下の墓まで追いかけて遺体を破壊するのです。二度と地上に危害を及ぼさないように。

 

現代の中国共産党による堀墓は漢人の思想ではありません

ところで最近、中国共産党がウイグル人の墓地を破壊するという蛮行をして世界中から避難を浴びています。

 

【参考リンク】AFP記事https://www.afpbb.com/articles/-/3250689

 

これは中華風習の「堀墓」による行いではなく、民族浄化目的での文化破壊・一神教的な異教徒撲滅の意図が強いでしょう。

墓を破壊するだけなら確かに漢人の風習ですが、中共は未来の血を絶つために女性を殺したり妊娠できなくなる薬を飲ませたりしています。これは明らかに西洋的な意味での「民族浄化」です。

 

そもそも「民族浄化」や「異教徒撲滅」は中華の思想には無いもの。多神教の地域なので。
それはどちらかと言えば、西方の風習です。

これもまた民族差別に繋げるのはやめて欲しいのですが、あくまでも過去の歴史事実として述べれば、中華より西方の民族モンゴル帝国・元は、世界各地で苛烈な民族浄化を行ってきました。かつて中華全土で侵略した国々の文化を破壊し、皆殺しにした秦も西方(ペルシャ)の影響を強く受けていた国です。

おそらく西方・狩猟民族・騎馬民族・一神教信者にこの傾向が強く、農耕民族で多神教の東アジア人には異なる民族を“浄化”せねばならないという強迫観念は少ないはずです。

もっと露骨なことを言えば、そもそも「民族浄化」という言葉そのものが西洋(欧州)で生まれています。
ヒトラーが行ったユダヤ人ジェノサイド、ユーゴスラビアの血で血を洗う民族虐殺が典型事例です。

 

【参考リンク】民族浄化の語源となった虐殺事件(別サイト)

 

何度も書きますが、中国共産党を動かしている思想ベースは西欧で生まれたマルクス主義です。この思想の本性は一神教であり、西洋的な排他主義です。多神教の東アジア思想とは本質が異なります。

ゆえに古代漢人が現代を眺めたら、
中国共産党員は全く漢人ではない。奴らは中華思想の欠片も持っていない、外国人だ
と言うはずです。

 

まとめ

中華の「堀墓」は、先祖を大切にする・遺体を生きたものとして取り扱う思想が、不幸にも敵の墓破壊に向かわせるのだと言えるでしょう。民族浄化の意図はありません。

いっぽうで現代。中国共産党による文化破壊と中華の伝統とは全く違う異質なものであり、欧州で生まれた苛烈な一神教・排他主義に基づくことを理解してください。

もし「堀墓という野蛮な行いは漢民族の習慣による」などという主張がなされたら、それは真犯人の罪を中華民族へ着せる濡れ衣だと気付くべきです。真犯人が非難を免れ、中国以外の地(日本など)でふたたび同じ蛮行をするための準備。危険なプロパガンダですから、気を付けねばなりません。

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