孔子の人生を描いた『孔子春秋』感想。プロパガンダに潜む麒麟の卵
吉沢亮主演、渋沢栄一の生涯を描いた大河ドラマ『青天を衝け』が始まり、孔子『論語』への関心が高まっています。このため今、孔子に関する書籍出版や映像配信が増えているようです。
私も最近、日本のGYAO!で無料配信されていた『孔子春秋(こうし・しゅんじゅう)』という華流ドラマを観ました。
芸術作品としては素晴らしいものでしたが、少々中国政府のプロパガンダも含まれるようで解説が必要と思います。
この記事ではドラマの感想と、どの箇所がプロパガンダなのか具体的に指摘していきます。
【先に注意】吉沢亮の大河ドラマを好きになり、『論語』を学びたくなったからといって「孔子学院」へ入学してはいけません! 孔子学院は中国共産党の思想学校でありスパイ機関であるとの調査報告があります。「孔子学院」で孔子の思想を正しく学ぶことは不可能です、自分で『論語』などを買って学んでください。
ただし近年初版の「ビギナーズ向け中国思想解説本」は、中共御用学者や左翼によって執筆されていますのでご注意を。解説の少ない原典翻訳の『論語』をお奨めします。
※現在ネット上に「孔子学院はスパイ機関ではなく安心安全」と主張する記事が溢れています(中国と関係深い安田峰俊氏による記事など)。プロパガンダなので注意してください。
【孔子学院についてはこちらの記事をどうぞ】
『孔子春秋』とは
ドラマについて簡単にご紹介。
『孔子春秋』、邦題『孔子』は2011年に制作された中国製ドラマです。長きにわたり神格化されてきた孔子を、失敗をしたり苦悩したりする人間として描いた大河ドラマ。
衣服やセットの技術は高く役者の演技も素晴らしい。まるで印象画のような美しい映像、芸術性の高さに感動します。
〔下画像リンク先はアマゾンプライム〕
ストーリーはフィクション多めです。なので孔子の史実を学ぶ目的で観てはダメ。しかし大雑把に時代の雰囲気や人物イメージを得ることはできます。映像で古代に馴染んだら必ず原典を学んでください。(与えられたフィクションを鵜呑みにするのは禁物!)
さらに一歩進んだ鑑賞法として、このドラマからは現代中国政府のプロパガンダや、一般国民が何を考えているか… といった現代の世相を読み取ることが可能です。この点は後述。
古代を描いているようでいて、これはまさに現代・今この時が刻まれた映像記録なのだと言えます。現代中国とこの先の未来を知りたい方こそ観るべき映画です。
個人的なドラマの感想
解説をする前に、純粋な作品としての感想を書いておきます。
古代に馴染みのある筆者には音楽も映像も素晴らしいと感じられました。
細部はともかく、映像全体に古代の“薫り”が炊き込められているのは確か。冒頭から一気に古代世界へ引き込まれます。
清などの近代チャイナの臭いが一掃されていることには驚嘆、感動しました。制作者は紀元前の中華文化・思想について深く学んだ様子で、衣服や小道具などにも緻密な再現が見られます。(ただし食事内容など首を傾げる点は多い。膳の手元は映さないところから、分かっていない箇所は省かれているようです)
かつての、チープでダサいチャイナ映像を知る世代としては「ここまで芸術性が上がっていたのか…」と驚きを覚えずにいられませんでした。日本のドラマでもこれほど芸術性・技術が高い歴史ものはお目にかかったことがありません。キャストたちが年を重ねていくたびに施されるリアルな老けメイクにも圧倒されます。
ストーリーは少々面白みに欠けるでしょう。アクション満載のハラハラする現代ドラマに慣れた人は退屈で観ていられないはず。
これはおそらくストーリーを愉しませるためのドラマではありませんし、史実を学ぶための歴史ドラマでもないと思います。印象風景に思想を織り込んだ芸術作品。どちらかと言えばヨーロッパ系の映画に近い表現です。
ネットで日本人のレビューを見ていると非常に低評価で、「退屈」「意味不明」「時間の無駄」などと書き込まれていて残念に思います。現代日本人も、もう少しアクションの少ない物語に我慢できるようになれば、この映像作品から深い意味を汲み取ることができるはず。惜しいことです。
私はこういった静かな映像作品のほうが好きですので、孔子の言葉(をイメージした制作者の解釈)の一つ一つが胸に響きました。特に孔子×老子の対談を再現したシーンには感じ入りました。老子が星々の巡りを孔子へ説く下の景色が一番好きです。嬉しくありがたい映像でした。制作者に多謝。
また、私が何よりも感動したのは「人間・孔子」の描き方でした。
神格化されてきた人の地位を引きずり下ろすためには、全くあり得ない貶め話を叫んで「卑しい別人格」を作り出し、誹謗中傷する手法がとられます。儒教を破壊する政策をとってきた今までの中国共産党は孔子に対して作り話で貶めてきましたし、日本の左翼は今も孔子や諸葛亮に対して汚い嘘で中傷し続けています。例:日本左翼による歴史人物への誹謗中傷
現代でもトランプ前大統領に対して大量の“フェイクニュース”で貶める手法がとられました。あれこそ、人間性の欠片もない左翼らしいやり方です。
しかしこの映画には誠実な人間としての心が感じられました。神ではない孔丘の素直で正直・かつ頑固である人格的魅力が存分に表現されています。超常的なエピソードがないからこそ、唯一無二のピュアな人格が引き立ち輝いている。
ドラマは大量のフィクションで彩られていますが、どれも貶める目的ではなく人格の真実を描くための良質なフィクションだと感じます。制作者は相当に勉強したはず。このような史書よりも核心に迫るフィクションを描くのは大変難しく、史実を詳しく知った人でなければできないことだと思います。
後で書くように後半には政府プロパガンダがさしはさまれています。おそらく政府命令で創られたドラマでしょうから、仕方ないと言えます。受け取る我々が鵜呑みにしないよう注意すれば良い。
むしろ、言論の自由がない国で制作したのにここまで誠実性をもって表現した監督・脚本家に脱帽します。現代大陸人に期待が持てる作品でした。
ほぼ同意の秀逸レビュー
アマゾンから共感したレビューを引用しておきます。
yuujinn 5つ星のうち4.0
確かにたるいストーリーですが、こんなにリアルな表現された中国ドラマは初めてで、映像美が凄くテレビドラマというより映画のようです。衣装や灯り、盃や壺などの小道具に拘った作りで、何より(食事風景に箸が出てこない)ことにびっくり!紀元前500年頃の話にどんどん引き込まれました。孔子の事もあまり知らなかった自分に気づき
ドラマの中の孔子の言葉に、今に通じるものをとても感じ、2500年経っても規範となりうるし、色んな人が引用されてる事が理解できると思いました。春秋戦国時代は国の数が多すぎて、駆け引きだらけの中、真理を求め放浪した孔子はやはり凄い、と感じました。 面白さと言うよりも紀元前の中国を垣間見るくらいに思って見たらいいと思いますよ。
くまもん 5つ星のうち5.0
久々に質の高いよい作品に巡りあえました。2500年ほど昔の戦乱の世に孔子のような人が産まれ、「仁義礼智信」に基づいた高潔な思想を持ち、人々の幸せな日々の生活を願って、信念を曲げずに教えを説く姿に感動しました。彼に関わる様々な人物像も丁寧に描かれていて、人の生き方を考えさせられます。風景描写や時代考証をしっかりした、手抜きのない、大道を見据えた製作姿勢にも感銘を受けました。そして、役者さんたちの迫真的な演技の凄みには圧倒されました。長編作品の醍醐味を遺憾なく発揮し、かつ、現代社会が抱えている諸問題に目を向けさせてくれる作品でした。昔観た「三國志」の作品も長編で見応えがありましたが、より多くの方々に観ていただきたいと思いました。また、久しぶりに「論語」を読みたくなりました。時空を超えた普遍的な哲学は学ぶ価値があると思います。
フィクション部分
上に書いた通り、孔子の人生として描かれるストーリーはフィクション多めです。一部ですがフィクションの例を挙げます。
両親
孔丘(孔子)の母である顔氏は、史実では巫女です。
父が誰かという話には諸説あり、孔紇(こうこつ)という有能な軍人だったという説が有力。しかし孔紇が王から爵位を与えられたとの話は残っていません。
なお孔子を神格化する伝説にて、処女懐胎とされる話もあります。しかしそれは中華大陸へキリスト教が伝来して以降の作り話であろうと考えるのが妥当です。中国で人気を得た人物にはこのような無理めの伝説が多いのです。このドラマではそういった伝説を排除して普通の人間らしく描いたために、なおさら孔丘と周りの人々の人格の高さが際立っていると言えます。
師匠
師匠が呉の公子、季札としたのも粋なフィクション。季札は実在人物ですが若い孔子を連れて旅したという記録はありません。
孔子は「誰にでも学び特定の師を持たなかった」とされます。礼法に触れ書を読み漁り、知識人へ話を聴いて学習したそうですが、ほぼ独学のようなもの。偉大な思想家は独学であることが多いのです。
幼馴染
ドラマで物語の核となっている陽虎・少正卯との幼馴染という関係も残念ながらフィクション。三人は同じ魯の人物ですから幼馴染だった可能性もゼロではありませんが、特にそのような過去を匂わせる史実はなかったはずです。
季孫氏の家老だった陽虎は孔子と組んでクーデターを起こそうとし、失敗した人物。性悪な人物で孔子と対立していたというドラマの設定はフィクションでしょう。むしろ孔子は陽虎と組もうとしいていたらしい、実現しませんでしたが。
魯を混乱させていた少正卯が孔子の裁断によって処刑されたのも史実。詳しい経緯は分かりませんが、孔子が友人を処刑してしまっために苦悩したという設定もフィクションでしょう。
老子との対談
筆者が一番好きだと書いた老子との対談シーン。
二者の対談は史書にも事実として記されていることなのですが、そもそも「老子」がいつの時代の誰なのかということがはっきり分かっていません。複数人の「季(き)氏」の総称だという説が有力です。
ですから、史書に記された孔子・老子の対談はあくまでもその時代の季氏と話をしたということなのだと思われます。
結論としてこのドラマの対談シーンはフィクションということになりますが、それにしても素晴らしい描写でした。
三桓氏との政争
三桓氏は実在しており、私兵を持って権力を独占したのも史実です。しかしクーデターを起こして斉へ逃げたのは襄公ではなく昭公。
その他、細部の経緯が異なっているのでドラマ設定を鵜呑みにされませんように。
晏嬰
このドラマでは何故か斉の宰相・晏嬰(あんえい)がひたすら孔子びいきで、命懸けで孔子たちのサポート役に回るなどしていたのですが、史実では正反対。晏嬰はずっと孔子を警戒していたようです。
斉の王様は孔子を気に入っていて斉で使おうとしたものの、晏嬰の反対で実現しませんでした。おそらく賢い晏嬰のこと、孔子の有能さと過激さに気付いて危険を感じ遠ざけたのでしょう。
魯王と斉王との会談シーンもかなり史実とは異なりますね。晏嬰の陰謀で踊り子に剣を持たせ、孔子と魯王を殺そうとしたところ孔子が見抜いて阻止した。それで臆した斉王が三町を返した… という経緯が史実のようです(諸説あり)。
以下省略。
このように、挙げればきりがないほどフィクション設定があります。機会があれば書籍などで史実を確認したいものです。
ここが中共プロパガンダ! 決して鵜呑みにしてはいけない
何度も書いていますが、このドラマはあくまでも中国共産党の政策によって造られたプロパガンダ作品です。そのわりに誠実な芸術作品としても鑑賞できるので私は褒めているのですが、プロパガンダのところは注意して観なければなりません。
お子様や若い人に観せるときは、このようなプロパガンダが含まれていること、決して鵜呑みにしてはならないことを伝えてください。
2011年という時代。どのような背景があった?
まず、どのような政策のもとで造られたドラマなのかをご説明しておきます。
古典が奨励された時代
中国でこのドラマが造られた2011年は胡錦涛(こ・きんとう)政権の時代です。胡錦涛が特徴的だったのは、古典を奨励したことです。
本来、共産主義は伝統を破壊すべきと説きます。このため孔子が伝道した儒教は、中国共産党による破壊政策の最大ターゲットでした。
それまで神と崇められてきた孔子は激しい誹謗中傷の的となり、像は倒されて破壊されました。儒教の本は焚書され、儒家は道家とともに大量処刑されました。当然、一般庶民でも儒教をイメージさせるような言葉を口にしただけで皆殺し。
思想だけではなく、人間としての愛を持つことも禁じられました。「仁義」(愛や正義感)といった人間的な心を持つこと自体が、共産主義の世界では禁じられているわけです。
儒教が奨励する「親孝行」や「家族愛」などは一番の悪とされますから、親を愛したり子を愛しただけで処刑です。親は子を殺すことを強要される、子は親を殺すことを強要される。親子で内臓を喰い合うことを喜ばなければならない。涙を流しただけで殺される。それが共産主義です。
そんな地獄世界は現実で実現しました。ドラマ『孔子春秋』のなかでもほんのり触れられています。
子貢:当世の者ではなくとも後世の者が先生の像を壊したり書を燃やしたりするかもしれぬ
それでも先生の名は傷つかぬ
為政者が愚かで身の程知らずだと示すだけだ
はい。これまでの中共政権下なら確実に処刑される表現です。三十年前にこのようなことを口にする人がいたら、とてつもなく勇気ある英雄です。
このドラマが制作されたときも胡錦涛政権が認める範囲で注意深く表現しているのであり、手放しに共産党批判が許されていたわけではありません。
それでも、孔子を称えて文革の批判をやんわりとでもできる時代が来たことは驚きです。
急旋回して古典を利用するようになった中共
このように驚愕の急旋回をし、過去とは真逆の政策を始めた中国共産党。
しかし決して一般民の幸福のために古典を復権させたわけではありません。共産国ですから、当然ながら党は自己中心的な思惑しか持っていないのです。
たとえば一般民に対しては古典を復権させているように見せて「自由な時代が来た」という錯覚を起こさせ、安心させる。また民族意識を高めさせ、国家(中共のこと)へ忠誠を誓う奴隷に育てる。
外国人に対しては、中華の長い歴史で威圧。民族自決権をふりかざして周辺地域の侵略を正当化する。さらに、日本がやっているように魅力ある古代文化で観光客を呼び込む。(日本の模倣)
等々……。
民族主義が、国民支配や他国侵略に有効活用できると気付いたゆえの方向転換です。
今あたかも孫文が掲げた民族主義に目覚めたかのように見えている中国ですが、真っ赤な嘘。共産主義者は民族や、文化などに僅かも興味がありません。古典は盗んだうえ、破壊することしか考えていない。
中共の民族主義などは欺瞞であり、あくまでも「共産主義による世界独裁支配」が目的だと気付くべきです。
孔子学院で、孔子を存分に悪用
中国共産党は今、思想洗脳学校に『孔子学院』という名をつけ世界中へ広めようとしています。かつて最も誹謗中傷して貶めていた孔子をスパイ養成機関の看板に掲げるとは、恥も外聞もない。
いったい何故、最も貶めてきた孔子を看板に掲げることにしたのか。
それは孔子の思想に「上を敬い従う・絶対忠誠を誓う」性質があり、ここだけ拡大解釈することで独裁に悪用できると気付いたからでしょう。
おそらく戦前の日本が行った民族教育・臣民教育を模倣しようとしているのだと思います。
つまり中共は“大東亜共栄圏”の劣化版にて、東アジア~いずれは世界を独裁支配しようと目論んでいるのです。
そのために今、孔子を思う存分に悪用しています。目的を果たせば利用価値のなくなった孔子は“廃棄処分”となり、再び像破壊、焚書、儒家の処刑が行われるでしょう。
かつて貶められたかと思えば今は悪事の看板に掲げられている。孔先生、お気の毒に……。
プロパガンダの具体例
では、ドラマ『孔子春秋』に挿入された政府プロパガンダを具体的に示していきましょう。
1.財産の没収を「大道」と呼ばせる
ドラマでは孔子が三桓氏から私兵を没収、財産も没収するなどの急進的な改革を行います。
これはあたかも資本家から財産を没収する社会主義革命のようで、薄気味悪いですね。社会主義革命の素晴らしさを刷り込むプロパガンダです。
史実として孔子の改革は当時としては良いことだったと思います。しかし、現代思想を投影して孔子の口から社会主義革命を「正しいこと」「大道」と呼ばせたことに私は唖然としました。さらにそれが受け入れられなかった自分たちを悲劇の英雄として描いていることに呆れます。
強制的な財産没収と資本家の処刑が、大道?? そんなわけないでしょう。
三桓氏と呼ばれた貴族たち(王の親族)が国軍を奪って私兵とし、権力を独占して我がまま放題に振る舞っていたのは史実。この独占状態を改革しようとしたために孔子が嫌われて、国を追われることになったのも史実と推測されます。
確かに、貴族が権力独占して我がもの顔に振る舞うことは良くない。ただ全財産没収などはあまりにも行き過ぎた人権無視の横暴です。孔子も共産主義者のような大虐殺をしたわけではないはずです。
一緒にすべきではない、まして盗賊集団の犯罪を「大道」などと孔子に呼ばせるとは許せない。
温故知新したいならば本質を見て投影すべき。
当時の三桓氏を悪と見て現代へ投影する場合、共産党員の独裁・酒池肉林状態がそれに当たるでしょう。
2.孔子に「中華は一つになる」と未来予測させる
これは「一つの中国」を唱えて東アジアの国々を占領しようと計画している中国共産党のプロパガンダです。
このシーンでは孔子に未来を占わせる、という形で中国共産党の主張がさしはさまれます。
第35話より:
陳の王が孔子へ未来の我が国はどうなるか?問う。孔子は答えて曰く、
「未来には全ての国が滅び、なくなります。天下は一つになり――後に残るのは、強大で仁を重んじる王朝です」
この「強大で仁を重んじる王朝」が中国共産党のことだと言うのですね。あり得ない……。
大虐殺を続けている共産党のどこが「仁を重んじる」と言うのか? 地獄の虫の発想は理解に苦しみます。
しかしおそらくまた共産思考によって「仁」という言葉の意味をすり替えているのでしょう。
「仁とは生き物を殺すこと、苦しめることである by共産党ニュースピーク」などと。まさに悪魔の思想。
なお、ドラマのこの表現は政府の意向を汲んだプロパガンダと思われますが、もしかしたら制作者の考えは異なるかもしれません。
「仁を重んじる王朝」と言っていることから、本音では漢王朝のことを指しているようにも読み取れます。
何故なら最初に中華を統一したのは秦ですが暴政を敷いたためすぐに滅亡、本当の意味で統一を果たしたのは「仁義」を徹底した漢王朝だからです。秦は現代で中国共産党のシンボル、対立する漢は自由主義国家としてイメージされます。
(漢王朝は孔子の思想である仁義を重んじた国。特に最後のバトンを受け継いだ蜀漢は民想い・仁義の国としてのイメージが強い。そのため蜀は左翼に誹謗中傷される)
3.老いた孔子に唱えさせた「一つの中国」
このドラマで二回目となる「一つの中国」プロパガンダです。よほど強く主張したいらしい。
政府が『孔子』ドラマを創らせた目的としての、「民族主義によるアジア侵略」というお題目が孔子の口から語られます。
老いた孔子の口で自分たちのプロパガンダを唱えさせるとは非人道なことです。
まあ、春秋当時の諸国(下画像、濃い色の範囲のみ)を“中華”と定めるなら、構わないですがね。
台湾も入っていないし蜀すらまだ辺境。当然ながらチベット・ウイグルは遥か遠方の異民族の地、異国。これが中華ということで、いいですね? はいはい。
春秋時代の諸国:
Yeu Ninje, CC 表示-継承 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=1956670による
プロパガンダに隠された本音
このようなプロパガンダを目撃して非常に不快な気分となりましたが、制作者に腹が立たなかったのは一段下にある暗号を感じたからです。
次のような孔子らしい言葉から真実が見えます。
国を束ねていく者は圧政を行えば必ず打ち倒される
暴力を用いれば必ず滅ぼされる
その通り!
秦がそうだったように、現在の政府のような圧政を行う政権は必ず打倒されます。
このような言葉も中国共産党は
「我々は圧政していない。暴力などふるったことがない。“人権(新語)”を守るために殺してあげているだけだ。善行をしているのだ」
とご都合主義の言い訳でかわすでしょう。
しかし、大陸人はバカではありません。一般の人々は上のメッセージを正しい意味で受け取るだろうと思います。
プロパガンダの下に産み落とされた命懸けの卵に私は希望を覚えました。
麒麟が生まれるのはもうすぐです。
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