黄明志『攻向北方』日本語で一部翻訳(意訳)してみた ※4/2修正あり

黄明志『攻向北方』日本語で一部翻訳(意訳)してみた ※4/2修正あり

〔4/7Nameweeアカウントハッキング事件について追記〕

マレーシアの歌手、Nameweeこと黄明志作曲で『攻向北方』という歌があるそうです。私は以前から聴いたことはあったのですが、曲のタイトルや内容に気付いたのはつい先日。いつもバックグラウンドでの再生なので気付かなかった。

黃明志 Namewee 【攻向北方 Invasion In The North】@2018- Rise of Dynasty: Three Kingdoms Theme Song Ft. Ling Goh

※4/5 彼のアカウントがハッキングされ、全コンテンツが非公開となる事件が起きました。4/7復帰したようですが、再び上動画が削除されたときに備えて画像引用しておきます↓

孔明役の方の服装は相変わらず私の苦手な感じですが……(苦笑)、曲もラップも見事で惹き込まれます。

 

この曲は『漂向北方』という有名な曲の替え歌バージョンのようです。どうりで名曲。

Music Believerさんによれば、『真三國』というスマホゲームのテーマ曲として創られたのだとか。

4/7本人アカウント復帰:

お奨め。生歌は鳥肌もの!:

※『漂向北方』…故郷に帰れず中国の都会を漂流する少数民族の悲哀を歌ったもの、だと思います

 

歌詞を翻訳するのに躊躇した件

どんな内容の歌なのだろう? 気になったので翻訳しようと思ったのですが少し躊躇しました。

実は『三国志』に関するアジアの歌には誹謗中傷が篭められていることもあり、私は翻訳するのに躊躇してしまいます。

アジアでも『三国志』についての評価は様々。ベトナムなど共産国ではやはり日本と同様に蜀が貶められていて、理屈の通らない悪口での歴史反転が行われているようです。

さらに台湾や香港など大陸ヘイトで漢民族弾圧が叫ばれている地域では、漢民族の文化そのものを誹謗中傷する傾向もあります。

この通りアジアの『三国志』分野では歴史を真面目に分析したり、素直なエンターテイメントとして愉しむ言説は少数ですので注意しなければなりません。

【参考】アジアにおける文化破壊の歴史、毛沢東による『三国志』反転命令:

毛沢東と『三国志』、曹操崇拝について。蜀を「悪」と定め貶めた中国共産党

 

だから黄明志の『攻向北方』も翻訳するのが怖いなと思ってしまいました。

ただ、『漂向北方』に篭められた想いを読み取れば悪意がない可能性もあります。

【別サイト】漂向北方 日本語訳

というわけで、勇気を出して読んでみました。

『攻向北方』日本語訳(一部のみ)

先に掲載しているのは私の日本語ニュアンスでの意訳です。

4/2、現代中国語が分かる方による適切な翻訳を掲載。解説は記事の最後に掲載しています。

原文はこちらより引用

※著作権保護のため全文転載はしませんが、国際条約に基づき日本国著作権法第32条(正当範囲なら一部利用は認められる)に遵った引用を致します。

リフレイン箇所

この歌の主題となるリフレインの歌詞を意訳してみました。

私は北を攻める 理想のために戦う

高く聳える古い城壁も 志を抑えることができない

私は北を攻める 蜀道は長くとも

統一覇業の暁に 暗黒(悪)に打ち勝つ

そして、最後の希望は 清らかな血と涙

〔修正訳〕

を抑えることができない → 望みを抑えることができない

統一覇業の暁に 暗黒(悪)に打ち勝つ → 統一覇業の希望が 暗黒(悪)に打ち勝つ

最後の希望は 清らかな血と涙 → たとえ血が流れ、悔し涙が流れようとも最後の希望を手放すまい。必ずや後世に託していくのだ!(寄望)

 

ラップ

ラップ部分は『三国志』のストーリーのようです。

ある人(劉備)は天下のため国を護り漢王朝を救おうとした

ある人(曹操)は中原で天子を囲って諸侯へ号令していた

ある人(孫権)は江東で降伏すべきか戦うべきか迷っていた

ある人(呂布)は金のため女のため三人の主君の狗になった

…等々 以下略。

ちなみに「ある人は~」のくだりは原曲『漂向北方』の「有人说他在老家欠了一堆钱 需要避避风头~」に掛けているらしい。

全体に『漂向北方』を意識し対応させた歌詞です。

 

サビ

曲の山場(サビ)に作者の想いが語られているのでしょうか。

ここはかなり意訳してみました。二行目は自信なし。

幾十年、どれだけの血と涙を風雪のもとに留めてきたのか

主君が立てた旗とともに四虎を征する戦いをしてきた

歴史を綴る人よ、忘れずに書き残してくれ! 人々の心残り、無念を

最後の行ですが「!」というエクスクラメーションを付したのは私の個人的な想いからです。…すみません、思わず。

それと、ここを聴いていて弾圧を受けていた香港の人々がTwitterで

「日本の人たち、今のこの我々の戦いを保存して残しておいてくれ! 我々の行いは必ず消されて無かったことにされてしまうから…」

と叫んでいたのを思い出したためです。

2018年の曲なので香港革命は無関係ですが、やはり天安門事件などとも重なる歌詞のような気がします。

 

〔修正訳〕

二行目はやはり誤っていました。四虎は全く逆の意味。

主君が立てた旗とともに四虎を征する戦いをしてきた → 旗を掲げた忠臣たちは君主に追随して戦に赴く

※四虎は清時代の4人の忠臣(苏廷魁、陈庆镛、朱琦、金应麟)のこと

まとめ・歌詞の感想

『攻向北方』に批判的暗号が含まれているのかどうか?

現代中華圏の暗号に詳しくない私には分かりませんでした。ただひたすら、三国時代の人々の想いを尊重し誠実に歴史を語っている曲と感じられました。

この悲哀に満ちた曲に暗喩があるとすれば、『漂向北方』で表現された“遺憾”(心残り、無念)が投影されているということでしょう。

過去の人々と今の人々を重ね合わせ「さぞ無念だっただろう」と共鳴している。その言葉には人としての優しさがあります。

もし私の解釈が正しいなら、彼のような歌人の心こそ未来人類の希望、「清らかな血」と言えるでしょう。

 

4/2補足 日本語訳、修正いただきました

私の直観的意訳だけではさすがにまずいと思い、現代中国語と日本語の両方が分かる方へ質問してしっかりした訳をいただきました。

単に書き換えるだけでは面白みがないので私の誤り訳もそのままとし、ここに補足・修正解説を掲載させていただきます。

“欲望”のニュアンス

まずリフレインの箇所。

原文で「挡不住欲望」とあるところ、“欲望”は日本語にしたときちょっとおかしいですね。諸葛亮への批判または嫌味として“野望”と揶揄しているのか?と思ったのですが、『漂向北方』に対応していることを考えれば違う気がします。

それで私は素直に諸葛亮の気持ちのまま、“志”と訳してみました。つまり私の希望的翻訳となってしまったわけですが、やはり少々意訳し過ぎでした。

現代中国語からの“欲望”の翻訳は、「望み」「願望」と訳すのが分かりやすいそうです。

 

“曙光”の解釈

原文では「一統覇業的曙光」のところ、日本語の常套句で「暁に」と訳してしまいましたが、もう少し素直に曙光=(日本語でも同じ意味の)夜明け後の光と訳すのが正確のようです。

ということは、文の表現として「夜明け後の光が暗黒を破る」とのストレートな描写のほうが正しいし、より強い雰囲気となりますね。

――それと今気付きましたが、この“曙光”は“孔明”の暗喩でもあると思います。

孔明とは「明が孔(かな)う、真理が実現する」の意味。別の漢字では「暁に至る」とも表現できます。虚偽の闇を破る光をイメージした名。※これは筆者唯一の解釈です

もしかしたらノーベル平和賞の劉暁波氏とも掛けているのかもしれませんね。何重にも読み解ける。

ううむ華人ラッパー、深い。

 

“征戦”は意味が逆転していました

「伴随著君王揮旗四虎征戦」はすみません、私の翻訳は“征戦”に掛ける対象が逆転していました。

“四虎”とは征戦に随ってくれる忠臣のほうだったようです。清代の方々…存じ上げず。失礼しました。

正しい訳は上の通りです。

 

“涙”の解釈

日本語での生体反応としての「涙」は、中国語では「泪」を使うのが一般的らしい。

こちら「涙」という漢字を使うときは何か別のニュアンスがあるのかなと調べていたところ、「清らかな」という意味の翻訳(?)を知り、苦しいながらも上の通り訳しました。『出師表』の言葉「臨表涕零、不知所云」にも対応しているのかなと。

実際はここでの涙は「悔し涙」「悲し涙」の意味になるそうです。

この箇所の一文を意訳していただくと

たとえ血が流れ、涙が流れようとも最後の希望を手放すまい。必ずや後世に託していくのだ!との気概を感じる」

とのこと。

諸葛亮の気持ちも汲んでくださっていて感動しました。素晴らしい詩、そして感動的な翻訳に感謝。

 

改めて、全体の感想

翻訳してくださった方によれば

(YouTube)コメント欄をみると賞賛と賛美に溢れてますし、理想に対する情熱・そのために戦う人々への敬服を示している曲だと思います。

だそうで、警戒して穿った見方をする必要はなかったのかと思いました。

正しい訳をいただき改めて詩を眺めてみると、やはり「北方」とは中原のことではなく…(略)…の暗喩ではないかと思えますね。

だとするなら諸葛亮を“黄さん側”として見てくださっているということ。正しい歴史解釈に嬉しくなります。

最近の華流ドラマで「隠れ孔明」(笑)が多用されている理由も、同様のメッセージであると期待したいものです。

現代華人の方々へ。どうか孔明の心を思い出し、闇に染まらないよう抗い続けてください。いつか必ず夜明けは訪れます。

【参考】「隠れ孔明」に溢れた近年の華流ドラマ:

『琅琊榜』『晩媚と影』華流ドラマの謎…諸葛孔明モチーフに篭められた意味とは?

 

【事件】4/5 黄明志さんのYouTubeがハッキングされた件

冒頭で書きましたが4/5に突然、黄明志さんの「Namewee」名義、YouTubeアカウントにて全コンテンツが非公開となりました。

twitter話題のスレッドより:

本人のツイート:

2022/4/6

我現在人在英國倫敦,焦頭爛額忙著工作。前天半夜突然收到這樣的噩耗,是有焦慮,但其實我還蠻淡定的。不是我不珍惜這13年所經營的心血;而是在很多年前我就有心理準備會有這一天…

(私は今、イギリスのロンドンにいて忙しく仕事をしています。一昨日の夜にこのような悪い知らせ:アカウントの乗っ取り:を受けて不安でしたが、実際はまだ穏やかな気持ちです。この13年間、心血を注いだアカウント運営を大切に思っていないわけではないが、何年も前からこの日のために心の準備をしてきたのだから…)

2022/4/7

在網絡上看到有人說黃明志YouTube頻道被盜的消息是自導自演炒新聞,而且還很多人相信…

我想說,參與整個事件的人包括了馬來西亞YouTube總部,台灣YouTube,亞洲YouTube,Mcn夥伴Webtvasia公司,還有我們公司上上下下的同事。全部人數加起來最少有1000人,大家花了九牛二虎之力一起來搶救Namewee頻道

Deeple機械翻訳:(黄明志氏のYouTubeチャンネルが盗まれたことについて、ネット上では「自作自演のニュースだ」と言われているのを見たことがあり、それを信じた人も多かったのですが…。

この事件全体に関わったのは、マレーシアのYouTube本社、台湾のYouTube、YouTube Asia、McnパートナーのWebtvasia、そして社内の同僚たちでしたことを申し上げたいと思います。 関係者の総数は少なくとも1,000人以上、Nameweeチャンネルを救うには大変な苦労があった。)

この事件は、当記事で修正翻訳を上げた3日後のことです。

(ファンに知れ渡り騒ぎになったのが3日後なので実際は翌々日頃)

私が気付いたのは当記事をチェックしていた時。埋め込みリンクしていた『攻向北方』の公式動画が非公開となったので、始めはここの記事が黄さん本人(または楽曲関係者)に見つかったのだと思いました。そして日本人に引用されたことが不快だったか、あるいは『攻向北方』の暗号が知れ渡るのはまずいため黄さん自身がこの曲だけ非公開としたのではと想像していました。

もちろんすでに大々的に中国を揶揄する曲を発信している黄さんが今さら日本人の暗号解読で敏感に反応するのも変だなと思ったのですが、もしかしたら『攻向北方』は他曲を上回る地雷だったのかもしれない……と考えたり。

しかしその後、彼のチャンネルの全コンテンツが非公開となっていることを知り事態の深刻さに気付きました。

今回アカウント紹介にロシア語での罵倒が書かれていたため、どうやら皆さん「ロシアのハッキング」と思っているらしい。そんなわけないだろ!! と思いますが。(ロシアが彼を攻撃する理由がない。これはロシアを装った中国の犯行でしょう)

これだけ堂々と活動され攻撃を受け続けている黄さんのことですから、今さら私ごとき超々々マイナーな底辺ブログが影響することは有り得ないでしょう。だから今回のタイミングの一致は偶然だとは思います。しかし、仮に私がご迷惑かけたのだとしてもこの記事は取り下げません。

このような脅迫に怯えてすぐに言論を取り下げていたら、本当に世界中から人の言葉が消滅してしまうからです。

私は日本人として発信できる場にいるのですから、なおさら彼らのメッセージを伝え残していく責務があると思っています。

 

「歴史を綴る人よ、忘れずに書き残してくれ!」

了解。

あなた方は我々を書き残してくれた。だから今度は私が書き残す番です。

Translate »