諸葛亮の死因を医学的に考えた記事へ、反論

諸葛亮の死因を医学的に考えた記事へ、反論

当ブログ筆者は現在、体調を崩したため長文記事の更新やTwitterを控えています。

一点だけ短めな三国志雑談を掲載しておきます。“健康”にまつわる話。

 

孔明の死因を真面目に分析する医療系サイト

このような記事があって興味深く読みました。
孔明の死因を医学的に解明してみた、そうです。

【外部リンク】諸葛孔明はなぜ死んだ?:死因を医学的に考察

うーん……? どうなのでしょうか。

申し訳ないが、私は癌や結核という診断はハズレ!と思いますね。

まず診断の基礎となっている、死に際に「吐血した」という話は偽の情報だと思います。

『魏書』に

諸葛亮は憂いと怒りから血を吐くに至り…(略)…陣営に火をかけて遁走、谷に入ったところで病あらたまって死んだ

という記述がありますが、諸葛亮が死ぬ直前は五丈原で司馬懿と対峙して軍隊の動きが無かったはず。ということは作り話、あるいは敵方が得た誤情報だったでしょう。(司馬懿は当時、諸葛亮死亡の時点を正確に把握していませんでした)

それに戦況で怒って血を吐くとは、孔明らしくない※。憂いはあったかもしれないが怒りなどなく、最期は淡々としていたはずと思います。

史実をもとに現代性格分析で診断すると、孔明は安定を重視する大人しい(冷静沈着。テンション低め)タイプだったようです。蜀軍の不正・怠惰を叱責することはよくあったようですが、「戦況が芳しくない」という理由で怒りを爆発させることはなかったでしょう。戦況でいちいち感情を爆発させるタイプに戦略家は務まりません。

華流“死亡フラグ” 血を吐くのはお約束

そもそも中華で「死ぬ前に吐血した」という話はありふれていて、よほど真実らしい記録があるもの以外は信頼してはならないと思います。

華流ドラマを観ていると、何故か殺される以外で死ぬ人は全員「吐血する」設定がお約束のようです。言わば吐血は“華流・死亡フラグ”なのです。

おそらく血を吐く描写は派手だし、見た目に病気であることが分かりやすいので、昔から劇などで演出として使われてきたのでしょう。

このような疑わしい話をもとに診断すれば、現代の医師でも誤って当然ですね。

 

諸葛亮の死因は、やはり長期にわたる「過労」です

では、諸葛亮の死因は何だったのか?

やはり私は多くの歴史家が分析してきた通り、長期にわたる「過労」が原因だったと考えています。

もちろん死亡診断書に直接の死因として「過労」と書けるわけではないと思いますが、衰弱の背景に働き過ぎと精神負荷があったことは事実です。

長期の頭脳労働でまず発症しやすいのは、不眠からの「うつ病」

劉備の死後、蜀で事実上全ての責任を負った諸葛亮の仕事は殺人的に増えました。精神的なプレッシャーも大変に重かったと言えます。

現代日本の労災認定基準での“過労死ライン”は、2~6か月間の残業時間が平均で80時間を超える場合などとされています(この基準も厳し過ぎて非人道的だというWHOの指摘を受け、見直しが考えられています)。

しかし諸葛亮の労働時間は、とうてい現代日本の“過労死ライン”の比ではありませんでした。おそらく十年以上にわたり一日の休日もなく、食事や睡眠の時間さえも少なかったと考えられます。

裏付けとして、『後出師表』※に

臣受命之日、寝不安席、食不甘味。(北伐の命を受けてから安眠することはできず、食事もおいしく食べることはなくなった)

とあります。

この記述から、仕事に没頭するあまり不眠となり食事もおろそかになっていた様子がお分かりいただけるのでは、と思います。

※『後出師表』は他人が書いた贋作という説が有力で、私もそのように考えます。しかし上の通り日常の細かな描写があり、当時の本人の口癖と思われる言葉が使われているため、生前の諸葛亮をよく知る側近が書いた可能性が高いと言えるでしょう。

つまりこの頃の諸葛亮は、癌など身体的な不調で食事が摂れなくなったのではなく、心理的な要因で不眠・食欲不振を起こしていたのだと考えるほうが妥当です。最後には中等症程度のうつ病も発症していたのでは。頭脳労働者には多いケースと言えるはず。

直接の死因は“風邪ウイルス”感染からの肺炎では

精神的ストレスによる不眠・食欲不振という症状を抱えていた諸葛亮。

結果として体力を失って免疫が下がった。

それで五丈原辺りに多い弱毒のウイルス(体力がある人には影響ない弱いもの)で風邪をひき、回復せず床に臥せることが多くなったのではないかと私は考えています。

そして最終的には肺炎に至り、熱で眠ったまま逝ったのでは。

この“床に臥せるようになった”のも五丈原での最後一か月~二か月ほどだったのではないか?と思いますから、やはり長期間にわたって痛みで苦しむ癌を患っていたとは考えにくい。

また、結核だとすれば周囲の者たちに感染して兵士にも被害が及んでいるでしょうが、五丈原では感染症が広まって死者が増えたという記録もないので否定されます。

広い意味では確かに過労が原因だった

以上のような死を招いたのは、やはり長期にわたる過重労働が原因だったと思います。

つまり、広い意味では確かに「過労死」なのです。

現代日本の厚生労働省も「過労死」と認定するか微妙ですが(長期の過重労働が招いた死は現代日本で過労死と認められづらい不合理がある)、働き過ぎが寿命を縮めたと考えるのが客観的にも妥当。

世を去ったのは53歳、現代人から見れば若い死でした。当時でも心穏やかに過ごしていればまだ生きられた年齢だと言えます。

しかし責任の重さから彼が休息をとることは不可能でした。

『後出師表』にある「死してのち已む」は、「死だけが私を止められる」という意味を含みます。

この側近がずっと聴いていたはずの諸葛亮の口癖こそ、ブレーキのかけられなかった人生を表現していると言えます。

現代日本の労災認定基準で、「過労死ではない」と診断するのはちょっと疑問…

法的な観点から少し苦言です。

リンクした先のコラムを執筆されている福田医師は、現代日本の厚生労働省が定める認定基準に照らして「諸葛亮は過労死したとは言えない」と述べています。「現代日本では過労死と認定されづらい」と述べるならともかく、厚生労働省基準をあたかも医学に基づく事実であるかのように信じて「過労死ではない」と診断されている……。これはまずい。

現代日本において労災が認められる範囲が非常に狭く、被保険者の権利を害している現状にあるのは周知のこと。だからこそ外国から批判の声も上がっています。

福田医師も書いてらっしゃいますが、脳梗塞・心筋梗塞・鬱自殺など特定の疾患以外では「過労死」と認められないのが日本の現状です。仮に長期の過重労働が原因で別の病を発症したとしても、現代日本では「因果関係が低い」と言われ過労死が認定されづらく、労災保険は下りないことになります。しばしば問題となる、残酷な補償の足切りです。

このように批判のある政策上の狭き門を基準として、日本の労災保険の適用外にいた歴史人物の死因までも「過労死ではない」と診断してしまうのはいかがなものかなと思いました。

これは諸葛亮と同じく長期過重労働で健康を害し死亡した方々を、労災保険の過労死認定から排除する意見となる可能性があり、問題だと感じます。

現在現実に、長期過重労働で家族を失ったのに労災保険が下りず苦しんでいるご遺族の方々がいます。医師が欠陥ある労災基準を信じて「長期過労は“過労死”との因果関係が低い」と公に述べないでいただきたいものです。

現在の法律基準に照らして「認定が下りるかどうか?」と考えるのは行政・法律家の仕事

医師はあくまでも科学的な見解だけを述べていただきたいと願います。

参考資料

厚生労働省 脳・心臓疾患の労災認定(過労死と労災保険)PDF

 

【追記】彼らが「諸葛亮は過労死なんかしてない!」ということにしたい理由

このような他記事を読めば分かるはずの話だと思って解説を省いていましたが、初訪問の方のために追記しておきます。

今、匿名ネット工作員や『はじめての三国志』など悪質な歴史捏造団体だけではなく、上リンク先のような医師や学者の肩書がある人たちも総出で諸葛亮の人物像書き替えに勤しんでいます。

最近の彼らの活動は『出師表』などを貶めること、「劉備に忠誠心など微塵も抱いていなかった」「諸葛亮は民を虐げた悪い独裁者だった」ということにしてしまうこと…等々、人格キャラクター書き替えに集中しているようです。

上でリンクした医師などが大声で「諸葛亮は過労死なんかしていない」と叫んでいるのも、孔明が国民など他者のために苦労するような人間ではなかった、自分一人の欲を貪った独裁者だったという作り話を信じ込ませるため。

これは日本人に独裁政治を賛美させるための下準備です。

彼らは既に、始皇帝や曹操などの独裁者を「素晴らしい人格者・正義の人だった」と讃えるプロパガンダを盛大に行っています。コミック『蒼天航路』や『キングダム』で行ったプロパガンダは大成功。日本人はかなり洗脳されてしまい、虐殺などをする独裁者の言い分を正当化して賛美する思考を刷り込まれています。(この洗脳された人々は必ず中国共産党の独裁支配を手引きする要員となるでしょう)

次の段階として今は、日本人に人気があった諸葛孔明を「強権的な思想統制で民を虐げた独裁者だった」という共産国のリーダー的なキャラクターに作り変える、というプロパガンダに力が注がれています。こうすることで蜀ファンや孔明ファンまでも取り込み、独裁政治のメリットを日本人の脳へ刷り込む戦略です。

【一例】

柿沼陽平『劉備と諸葛亮 カネ勘定の三国志』感想。諸葛亮は偉大な共産リーダー? 

現に、他の方面からも池上彰などを使って若者・子供たちに「独裁政治にはこれだけメリットがある。素晴らしいものだから共産支配を受け入れろ」と教え込むプロパガンダが行われています。

【参考】「コロナを抑え込んだ中国を模範とせよ! 独裁政治はこれだけメリットがある」と教える池上番組

諸葛亮の名誉のために……ではなく、あなたがた日本人の未来のために史実を知ってください。

孔明は不才で至らないところがたくさんありましたが、少なくとも民を虐殺したり、思想統制を敷いた独裁者ではありませんでした。愚かで不器用だと謗られるでしょうが、自分一人だけ責任を負うつもりで仕事に励み過労死したのも事実です。

悪い独裁者が国民のために仕事をして過労死したケースは歴史上一つもありません。独裁者は自分一人だけの欲のために惰眠を貪り、長生きするものです。権力欲の強い人間ならなおさら長生きして権力を独り占めしていたいと望むでしょう(例:始皇帝は死んで権力を失いたくないので永遠の命を求めた)。ましてそのような死にたくない独裁者が自ら進んで北伐などの戦場に赴くことなど、絶対にあり得ません。だって戦場に出れば死んで権力を失うリスクが非常に高まりますから。

出口治明などは「孔明は死んでも名誉を得たいという我がままで国民を虐げた」というアクロバットな屁理屈をひねり出してまで諸葛亮を独裁者に仕立てようとしています。完全に矛盾しているでしょう。“死んだら金も権力も名誉もあの世に持って行けない”ということは、物欲の強い独裁思想の持ち主ほど怯える真理です。

どうかどうか、このような理屈に反する嘘を信じないでください。

中国大陸の人々は昔から曹操などの虐殺王を憎み、諸葛亮のような不器用だが民に寄り添った人間を愛してきました。このような史実・現実をしっかりと学んでください。

あなた方がプロパガンダを鵜呑みにして作り変えられた歴史を信じれば、独裁政権を日本へ引き入れる手先として利用されることになります。そして、自分の人生も家族の命も失うことになるでしょう。嘘を信じて虐殺の手引きをしたら、その罪は未来永劫消えません。

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